大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)2556号 判決

被控訴人は、控訴人主張の手形および金員の授受は金員の貸借ではなく、手形割引の方法により手形を売買したのであるから被控訴人が借用金債務を負うわけはないと主張し、原審ならびに当審における被控訴人本人尋問の結果中には右に沿う供述があるけれども、これは、前記認定に引用した証拠に照すと、とうてい信用することはできない。また原審における控訴人本人尋問(第三回)における控訴人の供述中に手形割引ということばがあるけれども、前段認定のさまたげとなるものではない。いわゆる手形の割引は常に必ずしも法律上手形の売買であるとすることはできない、場合によつては貸金の担保たることもあり、そのどちらであるかは、各具体的場合について、当事者の意思を明かにすることによつて、はじめて断定されることがらである。本件においては、前記のように手形金額からその百分の七にあたる金員を減じた金員を交付して手形を受取つた事実を手形割引とみられないでもないとしても、前段認定のごとく、証拠によつて消費貸借の成立を認定することは、なんら、不合理ではない。

本件手形および前段認定の際に(二)としてあげる手形が、いずれも、被控訴人振出の手形ではなく第三者振出のものであることも、右手形の取得を支払確保の一手段、すなわちこれら手形を担保として金員を貸与したものと認定するになんら妨げとなるものではなく、小切手の金額に端数のあることは金員の貸借としては異例に属するといえようが、担保にとつた本件手形が商業手形であり金額に端数がある関係から、謝礼等として七分を天引して残額を、貸付金額と定めたものとしてこれを理解できるし、また本件貸金につき別に借用証書を作成しなかつたことも、控訴人と被控訴人が前記認定の通り長期間取引上知合いの間柄にあつたことからみれば不自然ではない。むしろ控訴会社が繊維品の卸売を業とするもので、金融や手形の売買を業とするものでないこと、本件手形の振出人たる山口商事株式会社、および武村精久と控訴会社とはなんら関係なく、控訴人が手形を受け取るにあたり右振出人らの経理内容も調査しなかつたことが当審証人野々下璋太の証言や当審における控訴人本人尋問の結果により窺い知ることができ、かかる事情の下に被控訴人の裏書もない本件手形を控訴人が額面の七分引で単純に買い取ることは、万一右手形が不渡となつた場合手形金額の大部分に相当する額を失う危険を負担するわけで、証券等の投機売買を目的とする者の行為ならば格別、しからざる控訴人の行為として諒解しがたいところである。被控訴人の前記主張は採用できない。

(藤江 谷口 浅沼)

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